相続税対策として、法人化による賃貸経営を行なう場合、土地は個人所有のままとして、建物だけを会社所有とする手法がとられることが多いです。会社所有とすると、相続税対策として有利な不動産についてまとめました。
■所有期間が長く減価償却が進んだ不動産
税務上、建物の帳簿価格は、購入価格から減価償却費を引いたものです。税法上、売却価格とみなされる時価にはいくつかありますが、簿価もその一つで、実際の価値とのかい離があっても、売却価格として利用できます。
毎年、減価償却費は経費として計上が可能であり、毎年、減価償却が進むにつれて簿価は下がっていきます。そのため、築年数が経過した所有期間が長い不動産は、簿価が下がっていますので、法人への売却価格が安く済み、会社所有としやすいです。金額によっては、法人が分割払いではなく、一括払いとすることも可能でしょう。
■借金のない不動産
会社所有とする不動産は、借金をして購入していない物件、もしくは借入の少ない物件を選びます。
例えば8000万円を借りて建てたアパートの簿価が、10年後に4000万円となっている場合、借入残高が5000万円あると、4000万円で法人に売却すると、個人に1000万円の借金だけが残ってしまいます。また、通常金融機関によって、土地などに抵当権が設定されていると、売却が現実ではありません。
■自宅を社宅にする
会社所有とするのが望ましい不動産は、賃貸物件だけではありません。自宅の建物だけを同様に法人に譲渡すると、減価償却費として計上できるようになります。家賃として最低限の額を支払わなければ給料としてみなされますが、固定資産の課税評価額をもとに算出され、安価となることが多いです。
相続税対策として、実際に会社所有とするべき不動産は、個々のケースによって異なります。また、譲渡所得税がかからないようにするためには、税務署に「土地の無償返還に関する届出書」を提出するなどの手続きも必要となります。相続税対策での法人化にあたって、不動産の譲渡は税理士などの専門家に相談しましょう。