不動産を活用し相続税対策を

不動産を活用し相続税対策を

相続税大改正により相続税の課税対象者が増加

平成27年に実施された相続大改正により、相続税の課税対象者が急増しています。国税庁の発表によれば、平成28年中に亡くなられた方(被相続人数)は約131万人、このうち相続税の課税対象となった被相続人数は約10万6千人となり、課税された人の割合は8.1%におよびます。相続税大改正前は4.4%程度でしたので、3.7%ほど課税対象者が増えたのです。

課税対象者はなぜ増えたのか

一番の要因が、相続税の基礎控除の大幅な引き下げです。定額で控除される基礎控除額が5000万円から3000万円に、法定相続人1人当たりの控除額が1000万円から600万円に引き下げられました。

例えば法定相続人が4人だった場合、大改正以前では控除額が9000万円ありましたが、大改正後は5400万円の控除と、大きく引き下げられることになったのです。このことにより、課税対象者が大幅に増えていると考えられます。

相続額が多い場合、相続税率も上昇

もう一点注目すべきことは、相続税の税率が見直され、財産を多く持つ方の負担が増えたことです。相続税の税率区分が従来の6段階から8段階へと細分化され、相続額が2億円を超える方の税率がアップ。最高税率は55%に引き上げられています。資産価値の高い不動産を持つ人にとっては、相続税の負担が重くなる可能性が高まったのです。

一方、「小規模宅地等の評価減の特例」が拡充されたことにより、居住のために自宅を相続する場合などにおいては税負担を軽減できる可能性もできました。

 

そのため、評価額の高い広い土地を所持している人ほど、大改正の影響を受け、相続税の課税対象となりやすいといえるでしょう。

相続税ための現金確保が課題に

国税庁の発表によれば、相続財産に占める不動産の割合は土地が約38%、家屋が約5.5%と、全体の43.5%を占めています(平成28年のデータより)。相続財産の大部分が土地と家屋ですから、不動産相続にかかる相続税を納める現金の確保が課題となります。いざ、相続が発生してしまってから「どうやって相続税の現金を工面しようか…」と、途方に暮れるケースも起こりがちです。納税のために預金を切り崩すことになったり、不動産の売却が必要になる場合も出てくるかもしれません。

 一生のうちで、誰しも一度は経験するであろう「相続」。大改正により「相続税なんて私には関係ない」と考えている方も、実際に対策が不要かまずは確認しておくことが大切です。来るべきその日に備えて、何ができるのか――相続対策のポイントについて、ご紹介していきます。

相続対策としてやっておくべき3つのこと

相続対策には3つのポイントがあります。

 

1、争族(遺産分割)対策

2、節税対策

3、納税資金対策

 まずは、争族(遺産分割)対策について、押さえておきましょう。

☆争族(遺産分割)対策のポイント

3つのポイントのなかでも、財産の分配を巡って相続人の間で争いになる「争族(遺産分割)対策」は、もっとも難しい問題といわれます。遺産分割で争いになるのは、財産の多い少ないではありません。もめてしまう要因のひとつには、財産が皆が納得できるかたちで分けられないことがあります。相続を巡りいったん争いが起きてしまうと、相手が身近な人であるぶん、感情的になってしまい話がこじれやすく、泥沼化してしまうのです。争いにならないようにするためには、相続を始める前から、対策を立てておくことが大事になります。以下、生前でもできることと、相続後でもできることに分け、ご紹介していきます。

〔生前でもできること〕

〇分けられる財産にしておく

遺産分割が頓挫してしまうケースでよくあるのが、複数の相続人がいるのに不動産は自宅の1か所で分けられない場合です。賃貸物件で収益が発生するものと、自宅のように収益がないものがあり、価値が異なるため分けられないケースも多くあります。1か所の不動産では物理的に分けづらいため、売却するなどして相続で分けられるようにしておきましょう。特定の相続人に1か所しかない不動産を相続させるならば、他の相続人にはそれに見合う現金や株式を用意して、バランスを取るなどの方法が考えられます。また、皆がある程度納得できるよう、遺言で財産分与を明確にしておくのも一つの方法です。

 

〇財産や生前贈与はオープンにする

親などの「相続させる立場」の方にとっては、「親のお金をあてにするような生き方をしてほしくない」などの思いから、自分の財産について子どもに話しづらいかもしれません。しかし、意思を伝えておかなければ、遺された人に迷いが生じ、欲を持たせることになりかねません。しこりを残さない相続にするためにも、財産や生前贈与はオープンにしましょう。隠しごとをせず、疑心暗鬼の種をつくらないことが大切です。また、いざとなってからでは円満に話し合いや手続きをすることは難しくなります。普段から親子、兄弟姉妹でコミュニケーションをとっておき、互いの信頼関係を築いておけると理想的です。生前に話し合っておくことは、死後に遺言書を初めて見た相続人に、不意打ちのような印象を抱かせないためにも有効です。

 

〇遺言書を作成する

財産分与について具体的に決めていないと、不動産や動産について親族がもめて、節税対策や納税資金対策がしにくい状況が生まれかねません。それを避けるためにも、具体的な財産分与について記した「遺言書」を作成し、自分の意思を明確にしておきましょう。なお遺言書は、法律で一定の方式や作成方法が定められています。せっかくの遺言が無効にならないよう、基本ルールをよく確認しておきましょう。

遺言だけでは遺族の気持ちを納得させることができないこともあります。そんな無用な争いを避けるために、「付言」を活用しましょう。付言とは、法定な効力がない「気持ち」の部分を書き記すものです。財産の分割方法だけでなく、なぜそう考えたかを書いておくことで、遺族同士に誤解を招かないように配慮してあげましょう。たとえ法的効力がなくても、「故人の最期の願い」は、遺族にとって大きな意味を持ちます。

 

〔相続後でもできること〕

 

〇遺産分割の様々な手法を活用する

遺産がすべて現金や預貯金なら、相続分通り簡単に分割することができます。しかし、現実には宅地や家など簡単には分けがたい遺産があり、スムーズにいかないケースが少なくありません。可能な限り公平に遺産を分けるためには、以下の4つのポイントがあります。それぞれの方法は一長一短です。財産の性質や個々の事情を考慮し、最適なものを組み合わせて、相続人全員が納得できるかたちを目指していきましょう。

 

1、現物分割

財産をそのままの形で分割する方法です。自身の持ち家がある長男には株式と預金を、次男には自宅の土地と建物を、といった形が考えられます。ただし、相続分どおりに分配するのは難しいことが多いようです。

2、換価分割

財産を売却し、金銭にして分割する方法です。公平な遺産分割が可能です。売却の手間とコストがかかるのが難点です。

3、代償分割

相続人の1人が財産の全部あるいは価額の高い財産を取得する代わりに、他の相続人に対して相続分を超える部分の対価を支払う方法です。農地や商店など、分割しにくい財産に有効な手法です。代償する金銭などがある被相続人であることが前提となります。

4、共有とする分割

古い一戸建で借り手がつかない不動産であれば、共有してもメリットはないのですが、収益が上がっているビルや一棟マンションは、各相続人の持ち分を定めて、共有で所有する方法がおすすめです。不動産などを公平に分割するには有効な手法ですが、共有者全員の合意がなければ売却できないなどの制約があり、のちのトラブルにつながってしまう場合があります。

 

以下では、不動産を活用した節税・納税資金対策にターゲットをしぼって紹介いたします。各項目に節税対策なのか納税資金対策なのか、生前、相続後に行えるものかがわかるよう、【節税対策】【納税資金対策】【生前】【死亡後】と記載をしておりますので、参照ください。

 

相続税節税は、土地・建物の取り扱いにかかっている 【節税対策】【納税資金対策】【生前】

現在お持ちの現金や預金は、所持している限り額面が変わることはありません。しかし、そのまま持ち続けていざという時を迎えた場合には、相続税が重くのしかかり、次世代へ引き継げる金額は目減りしてしまいます。

一方、不動産を相続する場合は、実際にかかった土地購入費用や建築費用(時価)ではなく、国税庁が決定している路線価によって評価額が算定されます。

この評価額は、「土地」の場合一般的に時価の70~80%程度で算定されるため、土地価格よりも2、30%程度資産評価を下げることができます。さらに、土地の利用方法を工夫することで評価額はもっと下げることが可能です。

例えば、空き地や駐車場といったように他の用途に転用しやすい土地は、活用度が高い土地として評価額も高くなりますが、建物が建ててある土地、賃貸住宅を建てている土地などの場合には、土地の評価額が下がるのです。

このように、不動産をうまく活用することで、現金での相続に比べて次世代へより多くの資産を残すことができるのです。

不動産で相続税を節税するためのいくつかの対策

相続時精算課税制度」を活用し、生前の不動産贈与を 【節税対策】【生前】

生前贈与では、年額110万円までは贈与税がかからない「暦年贈与」がベーシックですが、年110万円の枠があるため不動産の贈与には適しません。一方、60歳以上の親または祖父母から、20歳以上の子供や孫に行う贈与について、2500万円まで贈与税がかからない「相続時精算課税制度」というものがあります。「暦年贈与」との併用はできませんが、2500万円まで適用できるため、不動産の生前贈与に適しています。

評価額は贈与する時点で評価されますので、今後値上がりが予想される物件については、早めに生前贈与をしておくと良いでしょう。

 

 

賃貸住宅を建てることで、評価額を減らす 【節税対策】【生前】

地主が自由に利用できる土地である「自用地」に、アパートやマンションなどの貸家を建てた場合「貸家建付地」となり、借地権割合と借家権割合をかけた割合が引かれ、土地の評価額を下げることができます。

また建物の相続税評価額は固定資産税評価と同様、おおむね建築費用の60%程度になり、さらに貸家であれば自用家屋の70%で評価されます。

 

現金1億円で土地・建物それぞれ5000万円のマンションを1棟建築した場合…

【土地】5000万円×(1-70%×30%)=3950万円

【建物】5000万円×60%×70%=2100万円

となり、評価額は合計6050万円となります。これにより、3950万円の評価減が実現できるのです。

※借地権割合70%、借家権割合30% ※固定資産税評価額は建築費用の60% ※小規模宅地等の特例は適用しない場合

 

現在の土地を売却して資産を組み替える 【節税対策】【生前】

現在、もし活用できていない土地をお持ちの場合、全部もしくは一部を売却して、そのお金で賃貸住宅を建設したり、新たに収益性の望める賃貸物件を購入するという方法です。現在は空き家となっている離れたところにある実家の土地など、維持管理や活用が難しい不動産を売却し、維持しやすい近場の不動産に組み換えたり、賃貸住宅に換えれば相続時の評価を減らすこともできます。売却資金を元手にすれば、新たな借り入れをせずに済む場合もあります。

 

このように不動産を上手に活用すると、土地・建物の評価額が下げられるなど、現金のままで相続した場合に比べて様々なメリットが生まれます。さらに、貸家を建てた場合には、賃貸収入も見込めるのです。

不動産で節税をするためのいくつかのアイディア

土地の利用区分の変更 【節税対策】【生前】【死亡後】

比較的広い土地をお持ちの場合で、その土地が2本の道路に面している場合は、土地を分割することで相続税を減額できる可能性があります。例えば、土地の北側に幹線道路など路線価の高い道があり、土地の東側に路線価が低い道路が面している場合、そのままですと、路線価が高い方の基準額で土地全体が価値が評価されてしまいます。しかしながら、例えば土地を南北で半分ずつの2区画に分割した場合には、北側の区画は高い路線価で評価されますが、南側の区画は、路線価の低い道路にのみ面するため、価値が低く評価され、トータルで見ると価値を減らすことができるのです。

 

土地の評価の見直しをする 【節税対策】【死亡後】

土地の評価は、現況とは異なるかたちで評価されている場合があります。そのため、実態に即した時価評価をすることで、土地の評価額が下がることがあるのです。以下のケースに該当している場合は、土地の評価が変わる可能性があります。不動産鑑定士、税理士などの専門家に鑑定を依頼する費用が発生しますが、時価評価をすることで節税につながる場合もあります。また、専門家に任せきりにするのではなく、土地の現況を一番よく知る自分自身でも確認することも大切です。

 

・高低差のある土地は10%減額

・私道がある土地、セットバックが必要な土地

・不整形地、がけ地、三角地、道路に接していない無道路地

・高圧線下の土地は建築制限があるため30~50%の評価減

・「地積規模の大きな宅地の評価」が適用される場合

・特殊な事情のある土地(土地汚染のある土地、文化遺産が埋まっている土地、近隣に墓地がある土地、ごみ焼却場が近隣にある土地、高速道路に接する土地、電車の線路や踏切に隣接する土地)

 

等価交換方式を利用する 【節税対策】【納税資金対策】【生前】

土地を有効活用したいものの、そのノウハウがなかったり、資金を負担できず、活用したくてもできない方もいらっしゃると思います。そんな時は、地主とデベロッパー(土地開発業者)とが共同で、主に貸しビルや賃貸マンションなどを建設する事業方式のひとつである「等価交換方式」を利用するのも有効な方法です。土地や、完成した建物の一部を手放すことになりますが、資金をまったく負担せずに建物を手に入れることができます。借入金が発生しないので、返済リスクもありません。土地も貸家建付地として評価されるため、評価額が下がることで減税になります。

ただし、設計、土地の評価額、交換比率などにおいてデベロッパー主導になるといったデメリットがあることにも注意しておきましょう。

 

小規模宅地等の特例を使う 【節税対策】【死亡後】

亡くなった人と家族が一緒に住んでいた場合、相続税を払うためにいまの家を手放すといったことは現実的ではありません。そのような場合に有効なのが「小規模宅地等の特例」という制度です。

被相続人が居住用または事業用として使用していた宅地を相続した際、課税価格を最大で80%減額できます。この特例の対象者は、その宅地を相続や遺贈によって取得した方です。

ただし、被相続人の配偶者など特定の方を除き、少なくとも相続税の申告期限まで居住または事業を継続していることが求められたり、その宅地の上に建物や構造物があることが条件となります。

その他の、相続財産を減らす方法【節税対策】【生前】

子供や孫の住宅の新築・改築で1200万円分まで贈与が非課税に

不動産を直接活用するわけではありませんが、お子さんやお孫さんなどが住宅を取得する際に、そのための費用を贈与する方法があります。「住宅取得等資金の贈与の特例」と呼ばれる制度で、受贈者1人につき最高1200万円までが非課税となるものです(平成32年3月31日まで)。居住用の家を新築/取得する場合のみならず、増改築などに活用できる場合もあります。子や孫などへ、早めに資産を移したいと考えている方に有効な制度です。

 

配偶者への不動産贈与で2000万円を控除

また、「配偶者への居住用不動産の贈与の特例」という制度を活用し、マイホームを贈与するのも手です。この特例は、婚姻期間20年以上の配偶者へ居住用不動産、または居住用不動産を取得するための資金を最高2000万円を課税価格から控除できるというものです。暦年の基礎控除と合わせ、2110万円まで無税で贈与でき、夫の財産を見かけ上減らすのに役立ちます。

 

しっかりとした土地活用計画を立てましょう

相続は受け継ぐ財産の種類や家族関係などが千差万別で、オーダーメイドで解決していくことが求められます。ご紹介した相続対策も、複数の対策を組み合わせたほうがより効果的な場合や、専門的な知識や計算、プラン経験値が求められます。

不動産を活用した相続対策について、ぜひココプラネットにご相談ください。高寿命な「200年マンション」で、二世代、三世代先までメリットを生み出せる資産活用方法を併せてご提案いたします。